竹南蛇窯の窯主、林瑞華は陶磁の未知なる極限に挑戦を挑み、未来陶という新たな領域に一歩を踏み出す。
2016年、ギネス世界記録に挑戦する栄誉を授かった。認定員の立会いのもと、薪焼き窯の最高温度Highest temperature in wood-Fired Kiln世界記録に認定された。
「これまでの歩み」
台湾伝統陶芸の突破口
1980年代、台湾の伝統陶磁産業は不景気の真っ只中にあり、父親の経営する伝統陶磁工場では、植木鉢や生活陶器を作っていたが、景気低迷の直撃を受け、ほぼ生産停止状態であった。廃業するか業務転向するか、難しい選択であった。私は父へ、伝統技能工法を初めから学びたいと言った。改めて工芸の方向に糸口を探し、この産業が永続する方法を父子共に模索していた。振り返れば早くも十数年の月日が経っていた。
転向を図ればおのずと新しい考えがやって来る。新しい陶芸の概念は、同時に2人の恩人に出会ったことで、2つの未来の方向が見つかった。この二十数年来、私はこの2つの方向を追及している。
ひとつは私が当時参加していた陶芸グループで、伝統的な古窯を再燃させるイベントでのこと。一人の陶芸の先輩がもらした貴重な言葉だ。「最も美しい作品、最も美しい釉の色は、窯の壁にあるのだよ。」この言葉に私は大きく突き動かされ、この言葉の意味を深く考え始めた。このイベントは成功したのかどうか、どんな意義があるのか、このイベントが終わってから一年近く、毎日私はお昼になると、蛇窯の中の壁を見つめて、この言葉の意味を思考した。長い月日をかけて、ようやく到達した答えは、釉薬の由来である窯汗(窯乳)が母なる源であり、釉の母源を焼き出すことができれば、それはすなわち未来である。
窯の壁と化石から悟った理論−−釉母
もうひとつの方向は、このイベントの中で、蛇窯に元からあった作品をすべて取り出して、その中の陶のテーブルと椅子をもう一人の恩人に売った。私はそれらを自ら届けて、台湾本土の化石を見せてもらうことにした。このことがきっかけで、私は台湾本土の化石とその希少性に引き込まれ、以来最大の趣味となった。採掘から化石の形成までを研究し、温度の変化から結晶化するまでの過程を私は「石の理論」としてまとめ、質の変化する陶器である釉母へと結びつけた。この理解が薪焼き窯への信念を更に強固にした。
高温で焼くことの意義とは?
薪焼きの方向に展開してから分かったことは、陶器を薪窯で焼成すれば、人工的に精製した釉薬は全く必要ないということだ。千差万別の釉の色彩を焼き出すことができる。しかし様々な自然の釉彩を焼き出すには温度管理が重要である。高温の自然釉を焼き出すには、高温に耐えられる窯と窯焚きの技術が必要である。この二十数年の間、私は窯の建て方を研究し、窯焚きの方法を改良し続けてきた。蛇窯での過去十数年の経験と父親に学んだ窯建ての技術、長期間の努力が実を結び、1997年、ついに1400℃の高温薪焼きを達成した。窯の壁に3,4000年も忘れ去られていた「釉の母源」である窯汗、窯汗を作品に焼出せるようになったとき、私の窯焼きへの確信がさらに強まった。2012年に全炎式の薪焼き窯を新たに建てて、1500℃以上の薪焼きを突破した。陶土を鉱石のように質変させた陶器、それを私は「釉母」と呼ぶ。釉母のコンセプトは「石の理論」を由来としている。地球はこの世の最大の窯であり、常に焼きものをしている。普通の石や石英石、玉石、宝石、ダイヤ、未来石などを焼成する。この過程には二十数年来の化石収集の経験が生きている。窯汗を2つの異なる質感に焼成する研究により導かれた結論である。釉母は質変した陶器であり、それは未来陶なのである。
なぜギネス世界記録に挑戦するのか?
私は二十年前にこう言ったことがある。木を焼いて1400℃以上に達することができる。人は不可能だと思っていたが、2000年に陶芸雑誌が「高温薪焼きの試練者」は1430℃を安定して焼き出せると発表すると、どうして木材を焼いてそんなに高温に達するのか人々は懐疑心を抱いた。さらに2012年にチャイナタイムスとユナイテッドデイリーが私が1516℃を突破してことを報道すると、それを信じない人もいた。陶芸の友人は、そんな高温で焼けるならギネス世界記録を破れるな、と直に言ってきた。不可能だと言うなら証明してみせよう。どうしてこんな高温で焼くことができるのか。温度自体が重要ではない。温度の背後に含まれる意味が重要だ。薪焼き窯が燃焼する過程で、薪木が完全燃焼しなかったら、温度は決して上がらない。また薪が燃える時の煙が、窯の中でもう一度燃焼しなかったら、高温に達することは難しい。だから高温に到達するには、絶対的に環境に優しく、二酸化炭素の排出を抑えた焼き方が必要なのである。
2014年に本を出版し、同時に香港科学技術大学で釉母を発表する個展を行った。そして2016年に世界記録である1563℃を樹立した。ギネス世界記録の樹立に立ち会ったすべての人、公証人、認定官、また全行程を記録したビデオによって、薪焼きがいかに環境に優しく、二酸化炭素の排出を抑えたものであり、質変を焼き出す陶器の「釉母」は未来陶であり、人類未来の希望であるかを検証した。
竹南蛇窯二代目窯主
林瑞華
【獨立公證人】
(1)劉鎮洲教授 國立台灣藝術大學造型藝術研究所前所長 (圖中)
(2)蕭光志教授 輔仁大學物理系副教授 退休 (圖右)
(3)郭煌村博士 工業技術研究院 博士 (圖左)
【燒窯團隊】
主司火:林瑞華
燒窯團隊: 鄧羽婷、王源堂、林明文、吳亮中
【過程】
DAY1 排窯 6 / 15 日
邀請到台灣獨立公證人國立台灣藝術大學劉鎮洲教授以及工業技術研究院郭煌村博士到場確認,完全空窯狀態隨即將150件生坯入窯依序排放進入0.6立方米的窯室,下午由崧啟工業公司的專業測溫團隊提供最專業的測溫儀器,耐高溫電熱偶。下午五點在郭煌村博士的見證下將窯室貼上封條。
DAY2 排窯、拜窯公、點火 6 / 16 日
上午同樣在兩位公證人的見證下,在火膛擺放兩件「窯王茶碗」坯體;何謂「窯王」就是每一次柴燒窯中最獨特奇美的作品。因為火膛是最危險的地方,如果燒窯成功,火膛的位置所燒出來的作品往往是這一窯的窯王,但爆破、沾黏的機率很高,成功率很小,每一次燒窯只有兩個小小角落可以擺放兩件茶碗,因此如果挑戰創下金氏世界紀錄成功,超過1500度高溫燒成而沒有損壞,肯定是這次的「窯王茶碗」
這次封窯口還有一項獨特的柴燒技藝大公開,就是林瑞華不但全程使用廢木料燒陶,在封窯口前投入大量廢木柴,可以連續12小時細火烘窯,也是他推廣---林氏柴燒的獨特燒窯法之一。
下午五點半林瑞華與公證人輔仁大學蕭光志副教授、郭煌村博士、蛇窯工作團隊一起祭拜.”窯公”感謝祖師爺傳授土與火的智慧,隨即點火,展開起為期51小時不眠不休的燒窯任務!
DAY3 小火、中火 6 / 17 日
經過一夜一天的小火烘窯,下午五點溫度已經順利升到1000度,升溫比平常速度快而且順利。
DAY4 大火、創下1563度紀錄 6 / 18 日
上午10點在公證人的見證下,比預期時間提早達到1500度的官方挑戰門檻,林瑞華和他的工作團隊繼續向超高溫邁進,挑戰他個人的1555度紀錄!晚上8點多達到1563度,英國金氏世界紀錄認證官也到場確認!
DAY5 頒發金氏世界紀錄證書 6 / 19 日
在金氏世界紀錄英國官方認證官John Garland的認證下舉行記者會暨授證儀式,與竹南蛇窯的所有好朋友、工作團隊見證創紀錄的榮耀與喜悅。